芸人の親として味わう『火花』

 

  『LA LA LAND』をIMAXで観るために豊島園のシアターに出かけると 春はそこまで来ていた…

先にサウンドトラックの数曲をダウンロードして何度も聴き、掟破りでYouTubeでミュージカル部分もたっぷり観てしまい、更にアカデミー賞の授賞式も数回見ていたので、かなり期待大になり 前夜に待ち切れなくて『LA LA LAND』の監督デイミアン・チャゼルの傑作『セッション』を観て妻と大いに盛り上がり 映画館に着いた時に珍しくソワソワしてしまった…

『LA LA LAND』を観て帰宅した夜、自分の興奮している頭の中を冷却する為にもう一度『セッション』の演奏シーンのみを観てからベッドに入った…『LA LA LAND』は恋愛ミュージカル仕立て映画であるが音楽作品の側面があり往年のハリウッドミュージカルや天然カラーのシネマスコープへのリスペクト作品でもある。がしかしJAZZ大好き人間の映画でもある。デイミアン・チャゼル監督は真からJAZZフリークである。もしかしたらあの衝撃のチャゼル監督デビュー作品の『セッション』以上にJAZZへのこだわりがつまった作品が『LA LA LAND』であると私は思うのである…

実は息子が吉本の農業で住みます芸人として仙台に一年間コンビで暮らすことになった。

ちなみ息子は右側のスーツ男で名前は杉本佳津山(すぎもと かつやま)という本名で、相方は和田僥倖(わだ ぎょうこう)という芸名を名乗り、コンビ名は衝撃デリバリーという1年目のコンビでまだまだこれからの二人であるが、私も少しファンになりつつある…..

仙台に息子が行くので、私と妻は息子の東京のアパートの荷物の引き払いに行ってきた。高崎からなじみの便利屋さんの軽トラックに来てもらい大物は便利屋さんに運びだしてもらい、私はステップワゴンに息子がまとめた段ボールや大量の服や靴をせっせと積み込んだ….段ボールの梱包や部屋の掃除は同期の芸人仲間たちが手伝ってくれたらしく引っ越し作業は2時間弱で終わった。息子は吉本の先輩のライブの手伝いがあるといい最初の30分しか立ち会わなかった…段ボールに黒いマジックでネタ帳と書いてある箱があった。息子は芸人の道を確実に歩んでいるようだ…相方の和田僥倖は文学青年でかなり右脳が発達した魅力あふれる青年である。文学のセンスはないが、人間力のある息子と一年間 仙台で共に大いに成長をとげるものと信じている。

 

『火花』を遅ればせながら読んでいる。

芸人の親として読む『火花』は格別である….最初の1ページですぐに文学好きの匂いがした。又吉大先輩の作品なので息子は本も買い、ドラマも観たらしいのだが…普段は漫画しか読んでいない息子は【何故…芥川賞を取れた傑作なのかが理解できない…何が面白いのかもわからない…】と話しをしていたときに…興味が湧き上がり是非私も読んでみようと思った次第である…

私は太宰治に中学・高校・大学とかなり心酔した時期があり、結局は夏目漱石にも傾倒していくのだが芥川賞作品を読む右脳の土壌は持っているつもりでいる。『火花』の一章を読み息子にはこの文学作品の深い意味がわからないことがすぐに理解できた….難解な言葉をつかわないで構成される文学作品としての『火花』は読んでいて気持ちがいい作品である。芥川賞の選考者は正しいと思うし、短いが傑作である。

『火花』は日本橋の丸善で購入した。私の最も影響を受けた一冊である夏目漱石の『こころ』にも出てくる老舗書店である。ハヤシライスは丸善創業者の早矢仕有的(はやし ゆうてき)が考案したという説がある。実際に丸善カフェで食べるハヤシライスは最高に美味しい。

夏目漱石の『こころ』や太宰治の作品群を映画化することには私は批判的であった….過去の映画やドラマはどれも私的にNGの愚作だらけであった….ところがこの『火花』の現在NHKで放送されているドラマは衝撃的に素晴らしい….残念ながらオリジナルのNETFLIX版は観てはいないが、この45分の尺におさまったNHK版でもかなり傑作である…..原作とリンクして読むとドラマのスタッフの才能に拍手と尊敬の意を惜しみなく送りたい…..本当に実に素晴らしいドラマである。こんな傑作はなかなかできるものではない….才能があるこのドラマのスタッフで夏目漱石の『こころ』や太宰治の『津軽』『斜陽』『人間失格』を手掛けてみてほしいと思ってしまった…..

『火花』の映画化に関してだが、このドラマ版と比べられるのはいたしかたないだろう….息子たちも映画『火花』へチョイ役で出演するのかな….と期待していたが『農業で住みます芸人in仙台』への正式決定でバタバタ忙しいようだ。芸人の親として『火花』を観ているとけっこうドキドキしてしまう….オーディションの場面やいつも行く神保町花月や渋谷∞ホールのバックステージが映ると本当に緊張してしまう….『LA LA LAND』のオープニングのロスの高速道路のジャンクションで踊る無数のダンサーや『セッション』のシェイファー音楽院のスタジオ・バンドの出演者にも親御さんがいる…..きっとどの親御さんも何回も自分の子供たちの出演場面を観ているであろう….

『LA LA LAND』『セッション』『火花』じつに素晴らしい作品であった…名もないアーティストたちのドラマを描いている作品は数あるがこの三作はそのどれにも似ていない傑作たちであった…..

とくに芸人の親として味わう『火花』は感無量の思いで観ること至極である….

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PAGE TOP